役者は何をよりどころに舞台に立つのか! 

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役者は何をよりどころに舞台に立つのか! 舞台上の虚構の世界にどういたらいいのか! 大勢の観客の注目を浴びながら舞台に出ていく役者にとって、それは大きな問題なのだけれど、それこそが「基礎力」に関わってくる問題なのです。

 

集中力の問題なのだろうと漠然と頭では分かっていても、実際に何をどうしたらいいのか分からないまま、本番への不安や緊張を抱えながら力を伸ばせないでいる俳優たちが大勢います。それじゃ問題の「基礎」を何からはじめていったらいいのか・・・実はそんなにむずかしい事ではないのです。問題は興味を持つかどうかです。興味がないと集中力はついていきません。

 

まず「見る」ことからはじめましょう。誰にでもできます。むずかしい事ではないですよね。ただ俳優には普通の人以上に「見る」力が必要です。

日常生活のなかで私たちが単に「見る」ということと、舞台上の俳優が「見る」ということは大きく違います。

 

虚構の世界に生きる役者にとって、目に見えないものを「見る」力や自分の見ているものを想像力で「見る」力が必要ですが、実際にまず現実生活のなかできちんとものを「見る」力がなければリアリティのない妄想になってしまいます。俳優に必要なのは妄想ではなく想像力です。想像力は自分の体験から養われていきます。

 

俳優にとって「見る」ことは単に目に写すことではなく、見ているものが自分のなかに入ってきて、それでどう心が動くのか、どう行動するのか・・・「見る」ことによってすべてが始まっていくわけで、表現の基礎中の基礎なのです。

 

「見ていない」ほとんどの役者は、実感のない妄想の世界にいるわけで相手役とも絡んでいませんし、観客が共有することもできません。「見る」力のある役者には現実感があり、観客は安心して共感共有することができます。役者が見えているものは観客にも見えるのです。

自分が本当に「見ている」のか「見ていない」のか、これは俳優修業のファーストステップとして意識されるべき大切なこと。そしてそこに「いる」かどうかが、俳優としての存在すべてに関わってくる基本的なことなのです。

 

「何かをやらなきゃ!」という強迫観念に囚われているような演技をよく見ますが、俳優に求められているのは何かを「やる」ことではなく、まず舞台に「いる」ことです。舞台上は必ず「どこか」なので、舞台に立つとその「どこか」にいるわけです。そしてどこかにいると必ず何かが見えます。

 

舞台にいられるようになるためには空間とお友達になることです。空間に向き合い「見る」習慣をつけましょう。舞台空間はもちろんですが、日常生活のなかで空や海など広い空間を見ることが大切だと思います。

 

世界は自分の外側にあります。自分の外にある物や人や場所を見ることが大事です。自分の内をみて外を見ていない閉じた演技は、独りよがりに陥りやすいものです。

 

最後に、実際に劇場の舞台だと役者の裸眼に見えるものは照明機材だったり、客席だったり、舞台袖だったり、作り物の美術装置だったりするのですが、見ちゃいけないものとして排除しようとするのではなく、その見える現実を受け入れた上で芝居世界への集中力をつけていくべきです。

 

 

基礎にもっともっと時間を!

可能性はまだまだあります!

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